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「時に神を裏切ることも必要だよ、グリード。神もしょっちゅう私たちを裏切るからね」
「ファウスト様は見かけによらず頑固な方のようだ。おれも意志を曲げるのは嫌いなたちでしてね、神のことはどうあれ自分を裏切るようなことはしたくないんです」
「……そうですか」
ファウストはそう言うと立ち上がった。
「その手紙を読めばあなたもその気になるはず。気が向いた時に領主館へ来てください。リェダの出立は一週間後です」
「なんと言おうと、姫を守る騎士はおれじゃありませんよ」
「手紙は読んだら捨ててくださって結構ですよ。私には不要のものですから」
「おい、コラ! 聞けよジジィ」
部屋を出ていくファウストにいつもの言葉遣いがこぼれた。さすがに言い過ぎたと口を抑えるとそれを見越したかのようにファウストが振り向いた。
「不敬罪であなたを追放してもいいんですよ。あなたは喜んで出ていくかもしれませんが」
「ずるいぞ、それ」
ファウストはにっこり笑って出ていった。ランバートが動く気配がしたので振り向くと、跪いて頭を垂らしていた。
「……そういうのもあったな」
「あんた、なんで騎士やってんの」
「さあな。わからねえ」
グリードはローブを脱ぎ捨てた。首もとまできっちり止められたボタンも外すと鍛えられた筋肉があらわになる。
「お前は?」
「おれか? 平民出身のおれが名を上げるには方法は二つしかない。立派な悪党になってリサロの大広場で縛り首になるか、このリシン聖騎士団の団長になるかだ」
「ふぅん」
「もっと理由を聞けよ」
「興味ない……手紙の内容は気になるから読むけど。ああ、あんたが領主サマに何話したかも気になる。なんでおれとシモンに関係があるのを知ってるのかも」
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