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モーニングの客が帰り
ランチの客が来る前
そんな時間帯である現在
客はその男だけだった。
年齢は高校生ぐらいに見えるが地元の高校のものではない学生服を着ている。
彼は銀縁の眼鏡を人差し指で押し上げると
フォークを器用に使い店の人気メニューであるナポリタンを口へと運んだ。
そして、ナポリタンの横に置かれたクリームソーダのバニラアイスが緑色を淡く染めながら元の大きさの半分も溶けたころ
―カラン、カラン
店のドアのベルを鳴らし、男は来た。
「ナガっち、いますか?~」
間の抜けたその声を聞き、口元を緩めながら銀縁眼鏡の男はゆっくり手を挙げ
「ここだ。……あと、ナガっちはやめろ、犬塚(いぬづか)……まぁ、強制はしないが」
百瀬 流(ももせ ながる)はゆっくり眼鏡を人差し指で押し上げた。
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