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「素敵ですね。髪伸ばされたほうがいいですよ。」
鏡に映った私に若い女性の美容師さんが声をかける。
私は呆然として鏡の中の自分を見つめ、呆けていた。
鏡の中には、茶色い長い髪をくるくるに巻いて、ゴージャスな女性がいた。
プロの力は恐ろしい。
これなら、そこそこの女性には見える。
あの後コンシェルジェの日野さんに案内され、ホテル内のスパ、美容室と梯子をして、全身、隅から隅まで磨かれ、見事に変身させられたのだった。
しかも下着から何まですべて新品が用意されて、グレーのやわらかな素材のワンピースまで…。
何から何まで用意周到に…。
「よし、これでいいな。」
どこから現れたのか美容師と同じように私の背中側からリューが鏡を覗いていた。
「あ…か、葛木様、素敵ですよ。」
美容師さんがリューに見とれ呆然としながら、リューに呟く。
私は、放心状態から醒めてイスから立ち上がる。
「あ、ありがとうございました。」
「じゃあ、いくぞ。」
リューはさっさと美容室を出て行こうとする。
私は慌ててその後を追った。
「ちょ、ちょっと待って。」
ホテルのロビーを歩くリューの先には日野さんがいた。
日野さんは私を見て一瞬、驚いた顔をして、嬉しそうに笑った。
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