13955人が本棚に入れています
本棚に追加
「遠いから時間かかるよ。電車だと早いけど、この格好じゃ、乗れないから。」
「いや、知らない街をドライブするのは嫌いではない。」
「そう?まあ、観光とは言えないけど、通りながら、気になるものがあったら言ってね。わかるものは紹介するから。」
「ああ。」
パーティー自体が早く始まったので、まだ9時前で、時間は充分ある。
横で、さすがのリューも疲れたのか、ふーっと息を吐いてタイを緩める。
何から何まで絵になる男だ…。
感心するくらい。
これで、性格がもうちょっと良かったらねぇ…。
「…なんだ?人の顔をジロジロ見て。」
「別に。」
「なんだ、夜の相手をお願いされるのかと思ったぞ。」
ハハハとリューは声を立てて笑った。
「はいはい……ほら、ハイヤー来たわよ。」
ハイヤーのスタッフがこちらに寄ってきて、目の前に止まった車のドアを開ける。
車に乗り込み、行く先を告げる。
「ちょっと遠いんですけど…」
説明し終わると、私は背をソファーにもたれさせた。
横に同じように背もたれに身体を預けたリュー。
車がゆっくりと動き出す。
リューの長身では、広いハイヤーの車内が小さく見える。
私も女性としては大きい方なので、普通のタクシーではせまく感じると言われたりするのだが。
クスクス笑うとリューが不思議そうな顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!