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今の季節は春。
外では桜の木が風に揺らされ、花びらが宙に舞う。
暖かくて、ほのぼのしてて私が大好きな季節、それが春だ。
――そんな大好きな季節を今日だけは呪う。
「澪っ!早くしなさい!!」
怒声がキーンと耳に響きわたる。
リビングにいるであろう母が私を急かしたのだ。
何故母は私がこんなに急いでいると言うのにお構いなしで叫んでくるのか。
私だって、こんな早くから入学式が始まると分かっていればへまなんてしなかったよ。
「分かってるよ!!うるさいなぁ……」
語尾のほうを弱めながらタンスを開ける。
私、真鍋 澪(まなべ みお)は今日、高校生になる。ちなみにしがない十五の女で彼氏などできたことはない。
……って、今はそんなことどうでも良いじゃん!!。
「なんで高校ってこんなに朝が早いの…」
私はなんかむしゃくしゃして呟く。
中学のころと同じ時間に起きた私は始業式から遅刻だろう。
記念すべき日なのに残念である、っつかこれを気に変な人に絡まれなきゃいいけど。
頭の中に怖そうな不良を浮かべながら真新しい制服を身につけた。
まぁ太一がいるから大丈夫か。
「じゃあ行ってくる!!」
私は返事も聞かずに家を飛び出した。
陸上部だった私はそれを糧に全力でバス停に向かう。もう音速はでてるんじゃないかってほどにだ。
ソッコーで走った私はなんとか締まりかけのバスに乗ることに成功! 無事椅子を確保した。
「疲れた……」
思わず独り言を呟き、額の汗を拭く。
携帯を鏡の変わりにして顔に何か変な物が付いてないか確認しながらふと思った。
なんか面白いことが起きないかなぁ…と。
その頭の中で願った一言は悪い意味で的中してしまう。
今までどおりの日々。
それは今日を境目に劇的に変化する。
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