贖罪

4/15
前へ
/107ページ
次へ
ふとした立ちくらみ。目の前にあるベッドを囲むためのカーテン、その映像に見覚えがあった。そして振り返って見える鏡。またデジャヴュか…と諦め混じりに舌打ちする。 まずデジャヴュだと気付くコマ、次に見るシーンがわかる。わかっていながら行動を変えられない。1秒後には先に頭に流れてきた場面を後から見る…見させられる。じぶんのデジャヴュが一般に言われる(記憶の混乱が引き起こす)解説と同じものなのかわからない。だが、一般的なものなら、そう思いこめればどんなに楽だろう。他にいい言葉を知らずデジャヴュと呼んでいた。 「まいったな…」 次にこうつぶやくのをわかっていてつぶやく。そしてその後押し寄せる無力感も知っていた。 大抵は状況が悪いときにこれが来た。 何かにセリフを言わされる感覚。見る前に映像を知っている感覚。わかっていて変えられない感覚。 息を止めるようにして歩き出した。病室のドアを開ける。 もう用意された映像を見ないように…。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加