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ふとした立ちくらみ。目の前にあるベッドを囲むためのカーテン、その映像に見覚えがあった。そして振り返って見える鏡。またデジャヴュか…と諦め混じりに舌打ちする。
まずデジャヴュだと気付くコマ、次に見るシーンがわかる。わかっていながら行動を変えられない。1秒後には先に頭に流れてきた場面を後から見る…見させられる。じぶんのデジャヴュが一般に言われる(記憶の混乱が引き起こす)解説と同じものなのかわからない。だが、一般的なものなら、そう思いこめればどんなに楽だろう。他にいい言葉を知らずデジャヴュと呼んでいた。
「まいったな…」
次にこうつぶやくのをわかっていてつぶやく。そしてその後押し寄せる無力感も知っていた。
大抵は状況が悪いときにこれが来た。
何かにセリフを言わされる感覚。見る前に映像を知っている感覚。わかっていて変えられない感覚。
息を止めるようにして歩き出した。病室のドアを開ける。
もう用意された映像を見ないように…。
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