霧の重さ

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「おいっ」 倒れた東郷に駆け寄ろうとした足が固まった。 チリーン…リーン… 遠くから鈴の音が聞こえた。 東郷の身体が黒い霧に包まれたかと思うとゆっくりとその濃さを増していった。 「うっ…」 霧の中で東郷が片膝をつきながら起きあがろうとする。 「クソっ」 虚空に向かって腕を振り回す。 近づこうと思うが足に力が入らない。足どころか声も出せない。 東郷はしきりに腕を振り回している。虚空に見える黒い霧はどんどん濃くなって下に伸び東郷を包もうとしていく。
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