贖罪

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「外傷は思いのほか軽く済んでいますが…。もちろん精密検査は必要です。しかし…それよりも衰弱状態が酷い。一体彼は何をしていたのですか?」 「いえ…久しぶりに会っていきなり倒れましたので。」 「なるほど…。」 興味があるのかないのかわからないが医者は納得したようだ。 「あなたの顔色もよくないですね?診察しましょうか。」 「いえ、じぶんは大丈夫です。友人が血を流したのに驚いただけすから。」 「そうですか?では…」 白衣が遠ざかっていく。無機質な廊下で切れかけているのか蛍光灯がちらついている。それが妙に気になった。 あの闇が消えた後、東郷をどうやって運んで来たか覚えていない。雨の中、車を走らせ夜間診療所にたどり着いた。幌はかけていたのだから出るときにしたのだろう。まったく行ったことの実感がなかった。現実感は今このときもないのだ。 ガチャリ… 病室に入る。部屋の電気は消えているが機械の青白い光が室内を仄かに照らし出す。 東郷は死んだように眠っていた。 しかしあの闇は何だったのだろう。 ぞくりと背中に冷気が宿る。 思い返すことを本能が拒絶した。
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