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「へえ、翔達ってそんな所から来ているのか」
「ああ。俺はここのサッカー部が強いと聞いて選んだんだ」
「サッカー部かぁ、試合とかやるなら教えてくれよ? 見に行くからさ」
「一年で試合に出られるわけないだろ」
「そうでもないぞ、ここって実力があれば一年でもレギュラーになれるらしいからな」
「詳しいですね」
「まあな、俺の従兄弟が一学年上にいるんだよ」
自慢げに胸を張るたけるの後ろに男子生徒が立ち、「ほお、俺の噂をしている奴はどこのどいつだぁ?」とたけるの頭にプレートを置く。
「わっ、なっ、に?!」びっくりした顔でたけるが後ろを振り向く。「あっ、和兄!」
和兄、と呼ばれた男子生徒は、イタズラ小僧のような好奇心に溢れた目をしており、笑うと智美達と同い年か、少し下のようにも見える。
「よおたける、入学おめでとう。さっそく友達もできたみたいだな」
言ってたけるの隣の席に座る。「俺は二年の石渡和樹。この学園でわからないことがあったら何でも聞いてくれよ。俺がなんでも教えてやるからさ!」
「田口翔です。よろしくお願いします」
「古田智美と言います。よろしくお願いします」
「……古田?」和樹が小さく呟き、「と田口、だな。よろしく!」途中から声のトーンを戻し、二人に笑顔を見せる。
「そういやさ、翔と智美って兄弟とかいるのか?」
「俺は上に姉が二人だ。年が離れていて、どっちも結婚しているから盆や正月くらいに会うくらいだな」
「へえ、智美は?」
「ぼ、僕は……兄が、一人います」
「兄貴か、お兄さんは何しているんだ? 大学生とかか?」
「え、っと……」
「今は海外留学中だ。あっちの生活が楽しいのか、手紙をあまりよこしてくれなくて、何をしているのかさっぱりだそうだ」
翔がフォローし、智美もそれになんとか合わせる。たけるもそれ以上は尋ねてこなかったので、ホッと胸を撫で下ろす。
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