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御影町、水島学園。真夜中と呼べる時間帯に二つの影があった。
どちらも男で、学生服を着ているところを見るとこの学園の生徒だろうか。一人は切れ長の目に整った顔立ち、男にしては少し髪が長く肩のところまで伸ばしている。彼は硬い表情で周囲に目を配り、何かを警戒しているようにも見える。少し後ろを歩いている男子は短い黒髪で温和な表情をしているが、前を歩く男子生徒と同じく何かの警戒をしているようだ。
「大輔、そんなに気を張らなくても大丈夫だよ」
大輔、と呼ばれた男子は後ろを振り返り、「圭介さん、そんなこと言っていると危険です。奴らはどこから来るかわからないんですから」と圭介と呼んだ男子を軽く睨む。
「おまえは本当に真面目だな。僕の弟にそっくりだ」苦笑しながら大輔の肩に手を置く。「そんな調子じゃ持たなくなる。少しは休むことも必要だよ」
「でも、僕らは人数が少なくて、怪我人も何人か出ています。動ける人が頑張らないと」
「その頑張れる人間が倒れた、なんてことになるのは考えないのかい?」
「……」圭介の一言に大輔は押し黙る。「……すみません」顔を伏せ、小さな声で謝った。
「いいよ。人数がいないのは事実だし、僕らは他の人とは違うから頼られる形になってしまう。でももう少し肩の力を抜いたほうがいい」
「……はい」
大輔が頷いた途端、これから進む予定になっていた廊下の先から何かを感じ取った二人は同時に睨みつける。
「……大輔」
返事は無かったが、隣で形を示した大輔を確認し、圭介もさらに警戒を強める。
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