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「大輔!」
慌てて圭介が駆け寄ろうとするが、圭介もまた誰かの攻撃を受けたらしく左へ飛ぶ。攻撃が来ると踏んでいたのか、なんとか受身は取れたようで、すぐに体勢を立て直そうとしている。
廊下の奥は相変わらず闇があり、わずかだがそれが濃くなったような気がする。周りの空気も重くなった。この場には大輔と圭介しかいないのに、誰かいる。一人というべきなのだろうか? ともかく、三つ目の存在はまったく感じられない。
ようやく呼吸を思い出した大輔は立ち上がり、周囲を警戒する。
と、圭介の目の前に闇が降り立った。「っ?!」突然のことに圭介は動くことが出来ず、闇は圭介を包み込み始める。
「圭介さん!」
大輔がそちらへ駆け寄ろうとして、けれど目の前に誰かが立つ。人の姿をしているそれは手をかざし、大輔をその場から弾き飛ばす。
「っ!」
すぐさま体勢を立て直し、大輔はそれを睨みつける。それはニヤリと笑うと、来いと指を動かして挑発する。急がなければ圭介が危ないと感じた大輔はこの挑発に乗り、それに向かう。
鋭い爪でそれを攻撃するが、それはあっさりと交わし、大輔の背中を思い切り蹴り飛ばす。前のめりになり床と激突しそうになったが、右手を伸ばして軸にし、身をひねって足から床に着地する。なんだこいつ、いままでの冥魔とは大違いだ……!
チラリと圭介を見る。闇はズブズブと圭介を呑み込んでいっている。抵抗が出来ないのだろうか? ならやっぱり急いでこいつを倒さないといけない。
左腕も黒い皮膚と鋭い爪を持つ状態へと変化させ、再びそれへと駆け出す。右腕の爪でそれを攻撃するがやはりかわされ、身をひねって今度は左腕の爪で攻撃を仕掛ける。かわされる。右の爪で攻撃。かわされる。左腕の爪。かわされる。右の爪。かわされる。右の爪。かわされる。
何をどうしてもそれに大輔の攻撃が当たるような気配は無い。それから三歩程離れて大輔は息を整えようと大きく息を吸い込み、吐き出す。どうすればこいつに攻撃が当たる? 何か突破口は無いのか?
「……それなり、だったか」
それが言葉を発した。大輔は目を丸くする。それもそのはずだ、いままで冥魔が言葉を発する、ということを見た事が無かったからだ。
「中々面白かった。でもタイムアウト」
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