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それが指をさす方向には圭介がいて、けれどその姿は消えようとしていた。「圭介さん?!」大輔が圭介に駆け寄ったが、圭介はその場から姿を消した。
「……圭介さんを、どこへ連れて行った!」
「さあ、どこだろう?」
「おまえは、冥魔なのか?」
「何であってほしい?」
「……ふざけるな!」
黒い獣へと姿を変えた大輔は、先程とはまったく違うスピード、パワーでそれへ攻撃を仕掛ける。が、それは大輔の腕を取ると自分のほうへと引き寄せる。
「弱い弱い。もっと力をつけないと勝てない」
それが手の平に光を収束させる。やばい、と頭が感じ取っているのに身体が動かない。大輔はそれの目を見ている。否、見てしまった。黒く、深く、混沌と呼べる程の色を持つその目は、大輔を震え上がらせている。本能が告げている。勝てない。怖い。強者とであってしまった弱者の心が、大輔を支配している。
「ばいばい。生きていたらまた遊ぼう」
光は大輔を包み込み、数瞬の後に爆発を起こす。それはその場から消え去り、後に残ったのは黒い獣が一匹。
いまから二年前のことだ。
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