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「どんなの造ってたの?」
研究室を覗き見ようとするが、達治はそれを制するように立ちはだかった。
「…今持ってきてやるから。」
えー とひかるは頬を膨らませる。
やらしいモノでも造ってるわけじゃないだろうに。
ぷうと相変わらず頬を膨らませていると、中からもう1人、人が現れた。
祖父と同じ発明家の林さんだ。
「佐野先生、ちょっと。」
「あ。今行きます。」
祖父はそう言うと部屋に入っていった。
何か問題でも生じたのかな…?
ひかるは首を傾げながらドアに近づく。
この建物の中で一番古いドアのせいか、話している声が静かに聞こえてきた。
『…壊す………おしい』
『しかし………問題が……』
「…なんだろう。」
揉めてるなぁと思い、耳を澄ます。
『…に………め』
『…………人魚姫……』
…人魚姫……?
ひかるはパッと顔を上げると、中から聞こえた単語に思考を巡らせた。
人魚姫…
絵本の中の少女
それがどうして話の中に紛れてるのだろう。
祖父はもしや人魚姫の発明でもしてるのか…?
ひかるの興味は次第に大きくなり、思わずドアノブをひねって中に入ってしまった。
しかし、研究室の中には誰もいない。
部屋の廊下側のドアが半ドアになっているからたぶん祖父たちは出ていったんだろう。
ひかるは立ち止まった。
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