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「だけど、彼女は王子様を殺さないで、自分が泡になって消えてしまったのよ。」
暑い日差しが窓辺の白いカーテンを突き通して目の前にいる母の顔を照らした。
あまりにも明るいせいか、その顔は見えない。
隣の椅子に腰掛けた少女は身を乗り出した。
「どうして?どうしてその子は王子様を殺さなかったの?」
少女は不思議そうに首を傾げる。
「王子様を愛していたからよ。」
母親は薄く微笑みながら本を閉じた。
「…えー?」
「 ひかるだったら、許せない?」
「うん!殴っちゃう!」
ブンブン拳を振るう我が子を見て、母親は苦笑いする。
「 ひかるには優しい子になってほしいんだけどなぁ…」
「む…じゃあ人魚姫は優しいの?」
母親はまた笑ってみせた。
「 人は恋をすると、その人の幸せまで恋しくなるのよ。」
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