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母は優しく笑った。
あぁ あれはいつだったか。
今日みたいに暑くて、なんだか悲しい日だった気がする。
「………痛」
寝ぼけた頭を夢から現実に引き戻すと、いつの間にか自分は椅子から崩れ落ちていた。
頼りないパイプ椅子もカラカラと乾いた音を立てながら転がっている。
周りを見渡せば、誰もいないいつもの部室だった。
部活しに来たら誰もいないため寝てしまったらしい。
一昨日から寝不足で脳味噌が麻痺しているような感覚がずっと続いていたからか…
「…暑いなぁ…」
エアコンでもつけよう。そう思って立ち上がると、ドアの入り口に誰かが立っていた。
「………マユミちゃん?」
マユミ という少女は顔を真っ赤にさせて持っていた資料をパラパラと落としている。
「あ…えっと…べ別にひかる先輩が椅子から崩れ落ちたとこなんて見てません…よ!?」
「…………」
明らかに動揺している後輩に何と言ったらよいか…
「あ…うん。寝てたみたいで…」
正直に答えるとマユミは頭をブンブン横に振った。
「そんなそんな!おもしろいとか思ってませ…」
ハッとまた顔を紅潮させる。
「…………すみません。」
普段大人しいマユミだが、何となく毒を吐く。
オマケに何かあると顔は紅潮気味だから感情がわかりやすい。
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