第一章

7/21
前へ
/41ページ
次へ
人魚姫が人間に恋をして、 裏切りにも似た悲しい現実を受け止め最後は泡になる… 幼かった自分には、少し切なくて、恋という甘い世界に憧れた。 恋… 私の中での母はいつも1人だった。 父に裏切られ離婚し、小さな自分を育てて からだは元々病弱で、思い出に移る母を思い出すと薬の匂いも一緒に懐かしまれた。 「恋は素敵よ。」 そう言って母は笑う。 「人に恋すると、その人の幸せまで恋しくなるの。」 なぜ? 母は愛した人に裏切られたのに あんな言葉を私に話したのだろう。 母が好きだった「人魚姫」 人魚姫はどうして 王子様が大切だったの? どうして他人の幸せを祈ったんだろうか。 そんなに その人との恋が大切だったのかな 「…自分が死んでも?」 だめだ。 自分はすぐに根本的なところまでのめり込むくせがある。 パンッと音が響くくらい頬を叩くと、手に持っていた重い鞄を持ち直した。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加