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ナンバーエイトは、はっとした表情になった。
アシュタルテが微かに口角を持ち上げて笑う。
「分かったら風呂にでも入って、今日はゆっくり休め。どうせこの嵐では、何も出来んからな」
「ははッ!」
敬礼をしたナンバーエイトが部屋を退くと、工藤が小さく吹き出した。
「何?」
アシュタルテが振り向く。
「いえ、失礼しました。人をのせるのがお上手ですね、貴女は」
「そう? ナンバーエイトは、やれば出来る男よ。檄を飛ばすのも、上に立つ者の義務でしょう」
「深いお言葉ですね。さすがはアシュタルテ、というところでしょうか?」
微笑をしながら、工藤は机上にノートパソコンを据えた。
「データの統計と、報告の抜粋です。ご確認下さい」
「ご苦労様」
全世界を震撼させるニュースが報じられて、1年が経った。誰も表には出さぬまでも、その脅威は日々、人々の心を侵食している。
10年前、“世界のカリスマ”とまで呼ばれた日本人の男、神永朔磨{かみなが さくま}の死亡が告げられた時、世界には驚愕が走り、あらゆる国の朔磨信者は、深い悲嘆に沈んだものだった。
しかし昨年、その朔磨が生きていることが、思わぬ形で判明したのだ。
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