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「そのようですね。妨害電波で攪乱する余裕すら、なくなっているみたいですから」
「今日、高良櫂吾{たから とうご}に会ってきたの」
工藤の言葉など聞いていなかったように告げるアシュタルテを、工藤が神妙な面持ちで振り返る。
「……今、何と」
「高良櫂吾に会ってきた。アンドア社との結託について、揺さぶりをかけてみたわ」
「アシュタルテ」
工藤の厳しい口調に、アシュタルテが顔を向ける。
工藤は真剣な眼差しで、真っ直ぐにアシュタルテを見据えた。
「不用意に人前に姿を曝すことすら危険だと、再三申し上げている筈です。高良櫂吾と言えば、神永朔磨を付け狙ってかぎ回っている、最悪の敵ではないですか。何をしているんです? まずは、俺に一言ご相談下さい。何かあってからでは、遅いのですよ」
峻厳を極めて言う工藤に、アシュタルテは眉を寄せた。
「なら、わたしが出かける旨を伝えた時、何故訊かなかったの?」
「貴女を信頼しているからです。それをまさか、わざわざ敵地に乗り込んで行かれたなんて……正気ですか?」
「わたしはあくまで、個人として彼に会って来たのよ。わたしが神永朔磨の関係者であるという裏付けがない限り、高良櫂吾が出来ることなんて知れてるわ」
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