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「ははは。ま、いいんじゃないですか、夜のお茶も。コーヒーにしますか?」
立ち上がりかけた工藤を、アシュタルテが片手を上げて制する。
「いいわ、わたしが淹れるから。何がいい?」
「え、あっ、いや、そんな!」
工藤は狼狽して立ち上がり、踵を机の足に打ち付けて体勢を崩し、大きく仰け反った。
「何1人で踊ってるの?」
「違いますよ。アシュタルテお手ずから淹れて頂くなんて!」
「味に保証はあります! 貴方が教えてくれたんじゃないか」
「別に、以前のような、凄まじい味のことを言っているわけではなくてですね」
「いいから、座ってなさい。昨夜、まだ熱が引いてなかったんでしょ?」
「……それは、まぁ」
ごにょごにょと口籠もって目を逸らす工藤に、彼と親子ほども歳の差があろうかというアシュタルテは、にっこりと笑った。
「たまには、わたしにも役に立たせてよ。貴方ばかり奔走してるのは、フェアじゃないわ」
「……分かりました」
工藤は諦めて、優しく微苦笑する。
「では、紅茶をお願いします」
「了解。アールグレイでいいのよね?」
「よくよく、ご存知のようで」
アシュタルテは微笑んで、キッチンへ消える。
嵐はまだ、止みそうにない。
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