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後悔のない選択を、して来たつもりだった。いつも。どんな時も。
「選択」は、常に行われている。誰にも気付かれぬところで。本人もそれと知らぬところで。
だから、後悔のない選択をしてきたのだ。
理不尽な道しか与えられずとも、最良と思える道を、選んできたのだ。
だから、あぁ、悪魔が生み出されてしまったのだろうか?
あの悪魔を生み出したのは、己自身だったのか?
ガツンッ!
脳天に固いものを叩きつけられ、喜朗{よしろう}は目を覚ました。
寧ろ気絶出来そうな衝撃に目から星が飛び、息が詰まる。
「何を寝ておる、神永喜朗。我を迎えるにしては、随分と態度が大きいことよな」
「ぐ……ッ」
頭上から降る声は、冷酷な悪意に満ちて、厭わしいものだ。喜朗でなくとも、この声はあまりに心地悪い。
「起きぬか。我を盲目とした代償、未だ支払えておらぬのだぞ」
喜朗は肘をついたまま転寝をしていたのだ。彼は椅子を立ち、背後を振り返らないよう細心の注意を払いながら、床に散らばった書類を掻き集める。
「わ……儂が集められるのは、これまでじゃ……。後は、貴方の思うようになさってくれ」
「ほぅ、ぬかしおる。我が眼間{まなかい}より神永朔磨を消したは、貴様であろう?」
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