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工藤は思わず、下手をすれば息子と言っても通用するような年齢のモーゼズの肩を、思い切り叩いた。
「オゥッ!」
「よくやってくれた、モーゼズ!」
「痛ぇよ、オッサン。ま、そんなわけだから、俺としては早くアシュタルテに教えてあげたいんだよね。とは言っても、さすがに女の子の部屋に突撃するのはアレだし。なんつったっけ、引き継ぎ?」
「取り次ぎ」
「そう、ソレ! してもらえるか?」
工藤は手元の白い電話を取り上げた。内線を繋いでいるのだ。
「アシュタルテ? お忙しいところ、申し訳ありません。モーゼズがかなり有力な情報を得ました」
『有力?』
受話器の向こうで、何かが倒れる音が響いた。
「だ、大丈夫ですか?」
『失礼、うるさかった? 電話線をポールハンガーに引っ掛けたの。すぐ行くわ』
忙しない口調で告げ、電話が切られる。
モーゼズはソファで足を組んだまま、ラベンダー色の封筒を矯めつ眇めつしている。どうやら、封は切っていないようだ。
ややあって、アシュタルテが小走りに部屋にやって来た。
「アシュタルテ。これ、分かる?」
モーゼズは挨拶もなく、ラベンダー色の封筒を掲げる。
「そ、れ……!」
アシュタルテは瞠目した。
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