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ジェニファー・メイウェザーは、両手一杯に花束を抱えて、病院の無機質な廊下を歩いていた。色白で美人、豊満な胸の彼女が色とりどりの花を抱えて歩くと、その温もりの感じられない空間に、華やぎが与えられる。
病室のドアを開ける前に、メイウェザーは精一杯の笑顔を繕った。
「櫂吾、入るわよ?」
ドアをスライドさせる。
白い床と白い壁、薄いグリーンのカーテンが作り出す無感情な空間で、白いベッドに上半身を起こしていた高良櫂吾が、顔を向けた。
「よぅ、ジェニー」
「暑……っ、窓くらい開けたらどう? 真夏なんだからね」
女性ハスキーな声で言って、メイウェザーは花束を傍にあった棚に無造作に置いた。
高良の黒い瞳が、それを見る。
「やけにカラフルだな。お前ぇ、そんな趣味だったか?」
「ばーか」
窓を開け放ち、メイウェザーは陽光を背にして高良を振り返る。
「貴方の部下からのお見舞いよ。メロン一箱譲ってくれた坊やもいたけど、さすがに今日は持ってこられなかったわ」
「メロンは適当に食ってやってくれや。折角だ、飾ってくれねぇかい、その花」
「勿論よ。花瓶、どこ?」
「あー…持って来てねぇわ」
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