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「そんなことだろうと思ったわよ」
呆れて肩を竦めるメイウェザーに、高良は微かに笑う。
「普段から花を眺める習慣がなかったんでな」
「……尤も、30を越えたオヤジが、花を愛でる姿というのも、なかなか奇異だけれどね」
「男は三十路が花盛りだぜ。……ちぃと俺にぁ縁遠いようだが」
高良は苦笑して目を逸らす。
メイウェザーは何も言えず、ただ窓の外へと目をやった。
かつて、高良櫂吾とジェニファー・メイウェザーと言えば、2人が揃えば解決しない事件はないと言われた程の名コンビだった。
しかし、高良警部補は、その道からの引退を余儀なくされてしまい、かれこれ入院生活も、半年を数えた。
高良には、良き相棒であるメイウェザーにだけ明かした秘密があった。彼の体は、幼い頃から病に蝕まれてきたのである。
──否、病と言い切るのは語弊がある。何が原因ということもなく、彼の身体は、あちこちの器官が脆いか壊れるかしており、外部からの刺激にあまりに弱かった。
風邪をひけば、そのまま何週間も寝込み、少し運動をすれば立っていられなくなる。
過酷な、現実だった。これまで隠しおおせたのは、メイウェザーと上司の協力あってのことだ。
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