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僕が所属する部活は一体どのような物なのか、という事についてはまた今度話す事にして、
さて、授業が終わり身支度をしていた僕が今最も優先して考えなければならない事は、目の前にいるご立腹状態のクラスメートをどのように宥めるか、という事である。
「全く君という奴は、授業中に関係のない事を考え過ぎだぞ? ボーっとし過ぎだ。何を考えていたのかは知らないが、これで何度目だと思っているんだ? 授業中に先生に何回も当てられてるのに、それを当たり前のようにガン無視するとは何事だ。
下手にクラス委員などをしてしまっている私も悪いが、君のせいで先生に怒られる私の身にもなってくれ。大体なんで私が怒られなくてはいけないんだ?とばっちりにしてもあんまりだろう。
何か先生は君の事を少し諦めている感があるのだが、君は本当にそれで良いのか? 私は結構心配しているんだぞ?」
「…話が長い。お母さんかお前は」
「むむむ、この期に及んでそういう態度を取るのか君は。なかなかどうしてその度胸だけは高く評価するよ。全く本当に、君は困った奴だよ」
長い黒髪をバサッと後ろに流しながら、彼女は大きく溜息を吐いた。
そして、笑う。
「ははは、まぁ私の知る限り君程面白い奴も中々いないからな。私は結構君の事を気に入っているんだぞ? …だからと言って、いや、だからこそ見過ごせない事もある。君は学生の本分が勉強であるという事をもう少し自覚しその事実を真摯に受け入れるべきだ。頼むからもう少しだけ学業に勤しんでくれ」
「違うな、学生の本分は青春だ。いかに青春を謳歌するかだ。勉強なんて、いつでも出来る。今が楽しければ、それでいい!」
「…君は本当に、駄目な人間だな」
クロミズ チサト
彼女、黒水 千郷はまた大きな溜息を1つ吐いて、またはははと笑う。
嫌みのない、今時の学生には珍しい澄んだ顔で笑う彼女は、少しお節介な所も合間って一部の男子からとても人気がある。
所属は吹奏楽部。
担当はフルート。
余りに優雅なその音色、演奏姿を評し、『妖精の音雫ーフェアリー ドロップー』とか呼ばれたりもしているのだが、正直そのネーミングセンスは神懸かりだと思う。(勿論全面的に皮肉だが)
まぁ、とにかく、そんな、所謂美少女な彼女は、どういう訳か、僕を少し贔屓目にしているようなのだ。
…まぁ、ひとえに僕の出来が悪すぎるからなんだと思うけど。
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