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黒水に連れられるままに音楽室までたどり着くと、そこではもう既に何人かの部員達が楽器を片手に練習を開始していた。
まだ部活自体は始まってないだろうのに熱心な事だ。
頭が下がるぜ、本当に。
「あ、黒水先輩っ! こんにちわ。あ~、また彼氏同伴ですか?」
僕達が音楽室に足を踏み入れると、それに気付いた部員の1人がそんな事を言いながら近付いて来た。金色に輝くサックスを両手で大事そうに持ちながら、にこにこと笑顔を振りまくこの子は確か……
「おお、綾音。相変わらず君は来るのが早いな。練習熱心なのはとても良い事だ。私は先輩として鼻が高いぞ」
「はい! 部活に一番乗りする為に、私いつもホームルームサボってますから!」
「いや、綾音、それは流石にどうかと思うぞ? あれ? 私が練習を強要したせいで後輩が道を踏み外してしまった……。どうしよう。青桐、私は一体どうしたら良い?」
「いや、良いんじゃないか? どうでも」
そうそう、この少し加減が利かないが、一生懸命な所が可愛らしく、後輩らしい後輩である彼女の、
外見的な特徴を言えば少し癖のある髪をツインテールにしている彼女の(やけに説明くさくなってしまったのは大人の事情だ。察して欲しい。)名前は緋塔 綾音(ヒトウ アヤネ)。
明日に煌めき夢にときめく部活っ子な女の子だ。ちなみに黒水ととても仲が良い。僕達の一個下で高校一年生なのだが、それを感じさせない位に人懐っこい可愛い子だ。
「ところで先程私が言った『また彼氏同伴ですか?』という言葉を否定しなかったという事は、やはりお二方は現在絶賛ラブラブ中という事でよろしいんでしょうか?」
「綾音、頼むからその丁寧過ぎる言葉遣いを止めてくれないか? 正直気持ち悪い」
「むぅー! 何ですかその言い草は。青桐先輩は少し口が悪いと思います。口が悪い先輩なんて嫌いです。帰って下さい。大体なんで吹奏楽部じゃないのにここにいるんですか? --あ! もしかしてやっと吹奏楽部に入る気になりましたか?」
「いや、悪いけどそのつもりはないよ。ちょっと黒水に呼ばれたから来ただけ」
「むぅー…、そうなんですか。何だか少し残念です」
そう言って肩を落とす綾音の姿は何だか寂しそうで、何となくそれが嬉しかったりもしたのだが、しかし、何故こんなに懐かれたのか良く分からないな。
まぁ…、わ、悪い気はしないかな☆(照)
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