Deep Blue ~青の溜息~

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  「むぅー! 何でですかぁっ! 黒水先輩のはいつも聞いて上げてるのに私のは聞いてくれないんですか!?」 「えー、だって面倒くさいし……」 「それが本音ですか! 本当に連れない奴ですねこの野郎! もう良いです、先輩なんて知りません! タンスの角に頭をぶつけて蜘蛛膜下出血で死ねば良いんです!」 「死因がやけにリアル!?」 何だか、とても楽しい会話だった。 この後もギャーギャーと綾音が五月蝿かったので今度彼女の演奏を聞いて上げる約束を取り交わしたのだが、全く、揃いも揃って僕を暇人扱いし過ぎだろう。 ……いや、まぁ、基本暇なんだけどさ。 しばらくすると、新品ピカピカの楽譜と少し年季の入ったフルートを持って黒水が姿を表した。 楽しそうににこにこと笑みを浮かべる彼女は誰がどう見ても見るからに上機嫌で、全く本当に、単純な奴だよこいつは。 「待たせたな青桐。ではこれから演奏をしたいと思うので、そうだな、向こうの小部屋に行こうか。あそこなら邪魔が入らない」 そう言って黒水は僕達を音楽室の奥にある小部屋へと連れて行った。 小部屋と言っても人が5~6人位は入れる程度の広さがあり、普段は部員達が練習用に使っているらしい。 僕が黒水の演奏を聞く時は大体ここに来る事になる。先程部員達の練習用とは言ったが、黒水以外にこの部屋を使うのはせいぜい綾音位で、実質この部屋は黒水の所有物みたいになっている。 まぁつまり、早い話が黒水専用のVIPルームだ。流石は『妖精の音雫』。扱いが違う。 「さて、それでは始めるぞ。適当にリラックスして聞いてくれ」 そして漸く、黒水、もとい『妖精』さんの演奏が始まったのだった。  ◆ 30分後。 一通りの曲を吹き終えた黒水はふぅ、と軽く息を吐いてにこりと笑った。それが、このミニ演奏会の終了の合図だったりするので、僕はぱちぱちと拍手を送る。 まあ正直僕には音楽の事はよく分からないが、こいつの演奏には、毎回毎回癪な程に心を揺らされて、感動させられてしまう。 今日は意地でも感動なんてしてやらないつもりだったのに、ここでもまた、僕はこいつに負けてしまった。 流石は『妖精の音雫』。 ちなみに名付け親は僕だったりする。  
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