悪の国

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「痛っ!?」 メイド―――ルカは紫の髪をした大臣にデコピンした。メイドが大臣にデコピンなど即刻クビだろう。 「なんだよ~いきなり、ひどいじゃないかぁ」 「それじゃ今度からは先に言ってあげましょうか?」 「いや…遠慮しとくよ」 ははははと乾いた笑い声がする。ルカはため息をした。そのすぐあとに大臣のネクタイを掴んだ。周りから見れば胸倉を掴んでケンカを売っているようにしか見えない。大臣はびっくりしていたがルカはそのまま話を続けた。 「あんたの位は?」 「は?」 大臣は質問の意図が分からない様子で呆然としていた。反応が無いのにいらついたのかルカはネクタイに込めた力を強めた。 「ちょっ……」 「いいから、あんたはどんなやつ?」 「えっと…よく馬鹿って言われる。お前に」 「そうじゃなくて」 ルカはさらに強めた。 「黄の国の大臣、がくぽです…」 「私はメイドのルカ、分かってんの?」 「何が?」 ルカは掴んでいたネクタイをキュッと締めた。同時に大臣――――がくぽの首が締まった。 「ぐっ…げほっがほっ」 「私達はメイドと大臣なの!親しげに話せるような関係じゃないことぐらい分かるでしょ!?本当に自覚が無いんだから…本当に馬鹿ね」 「なんだ…そんな事か」 首を絞められたというのにがくぽはヘラヘラと笑っていた。 「…今度はグーでデコピンしましょうか?」 「それデコピンの範囲じゃないだろ…てかなんでいけないんだ?」 「だから言ったでしょ?私達はメイドと大臣で」 その言葉をさえぎるかのようにルカの頭の上に手が乗せられた。 「その前に友人だろ?十年以上の」 続きの言葉が出なくなり悔しそうにするが心から嫌と言うわけではなさそうだった。ルカは慌てて言葉を探し怒鳴るように言った。 「とっともかく私はあくまで一般人!あんたは貴族!!しっかりと立場を考えて行動してよね!!」 「はいはい…言いたいことはそれだけか?俺上のほうに呼ばれてて」 「ええどうぞ、失礼の無いようにするのよ」 「そんじゃ、また後でな」 がくぽはルカを背にして歩き出した。コツコツと長い廊下に足音が響く中でぽつりとルカが言葉をもらした。
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