不幸な手紙

3/6
前へ
/49ページ
次へ
「ゴメンね」 「え……?」 召し使いはびっくりして思わず注ぎ途中のアッサムティーをこぼしそうになった。なんとか防ぎたっぷりのミルクとスプーン四杯分の砂糖を入れクルクルと掻き混ぜながら話した。 「何がですか?」 「さっきのよ、ただの召し使いなんて言って悪かったわ。本当にゴメンね」 王女はふかふかなソファーのような一人用の椅子に座っていた。両手を合わせ上目遣いで謝る姿は 愛くるしいものである。召し使いは申し訳なさそうに言う。 「そんな…僕にはもったいない言葉です」 「私の言葉が受け取れない?嫌い?」 「まさか!!そんな事あるわけないですよ」 「好き?」 「もちろんです」 「どのくらい?」 召し使いは戸惑ってしまった。その様子が嬉しいのか王女はクスクス笑っていた。 「とても…ですよ、王女様」 「王女じゃなくてリンでいいのにぃ、レンのばーか」 「すっすみませんえっと…リン様」 「謝んなくてもいいけど、んじゃ代わりに」 そう言うと人差し指を召し使い――――レンの口元に当てた。そしてニヤリと笑った。 「様つけないで…レン」 「分かりました…リン」 王女――――リンは満足そうにレンの煎れたミルクティーを飲んだ。その味に浸りながらつまらなそうな顔をした。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加