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「……やっぱ気付いてたか」
ため息をついた澤田は、優の髪を撫でながらどこか遠い目をして苦笑をこぼした。
「俺な、ずっと好きだった人がいたんだ。
子供の頃に始めて出会って…初恋だった。
ずっと忘れられなくて誰と付き合っても重ねてしまって長続きしなかった」
始めて聞いた澤田の恋は、とても切なかった。
初恋の人に再び再開したのは高校生の時…
半ば脅しのように強引に手に入れた澤田に、あっけなく別れは訪れた。
その恋は成就する事はなく、13も年上のその男は結婚するからと澤田を捨て姿を消した。
「俺は恨んでないし今でも忘れられない」
「そんなに傷つけられたのに!?」
「…脅しで手に入れたのはこっちだし、大人にはいろいろ事情ってもんがあるんだよ
それにあの人、ひでえ事いいながら震えてた。
だから…かな」
「澤田、アメリカ行けば忘れられんの?」
「さあな
けど何一つ頼る場所もないとこで必死になるってのも俺には必要な気がするんだ。
いろいろ勉強もしてみたいし」
「そっか
俺も何か見付けないとだ
夢が何もないんじゃな…
選考は確か10月だろ?
頑張れよ、応援するから」
「おう、でもまずはもう一回喰わせろ」
「おいっ」
シリアスな話をしながら再び盛る澤田に征服されながら、優は淳への想いをスッパリ断ち切る決意をした。
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