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「ね、せっかく来たんだから花火しよう!花火」
「お前馬鹿!?
この風で火着くと思うか?」
「そんなのやってみなきゃ分からないじゃん」
呆れる澤田達を引っ張った優は、風が吹き荒れる砂浜へと降りた。
着けては消えるといった動作を何度も繰り返し、半ば意地になって打ち上げたその花火は、冬の夜に弾け雪を伴って舞い降りた。
「雪かよ…どうりで寒い訳だ。早く車にもどろうぜ」
「そうだな」
走り出す澤田に続こうとした優の手が淳に握られた。
「……淳!?」
「優さんの手、すっげー冷たい」
「そりゃ冬だし…」
「こうしてりゃ少しはマシだろ?」
なぜか手を握った淳を振りほどく事が出来なかった。
つないだまま歩いていく淳の後ろを歩きながら、こうして手を繋ぐのは10数年ぶりだと気付く
それと同時に、大切な何かを忘れているように感じた。
……淳
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