328人が本棚に入れています
本棚に追加
古く・・・薄暗い洞窟の中
1人の青年が立っていた
黒く長い髪を後ろで結び、背中には一本の『釣竿』のような棒を背負った青年
その容姿は美しく、女性と見間違えるほどだ
そしてそれを妖しく引き立てる・・・真紅の瞳
血のように紅い両眼
彼はその瞳でずっと自分の前・・・洞窟の奥を見つめている
そこには・・・一本の巨大な剣が刺さっていた
彼はその剣を見つめたまま、その場に立ち尽くしていた
やがて・・・小さくつぶやく
「すまぬ・・・ワシはもう、お主を連れてはいけぬ」
剣に向かって声をかける彼
その真紅の瞳が・・・悲しく揺れる
「ワシはたくさんのモノをなくしてきた
お主の『本当の主』も・・・ワシが殺したようなものじゃ」
そう言って、彼は剣に向かい歩き始める
彼の足音が、不気味に響き渡っていた
「そんなワシに・・・お主を連れてゆく資格などない」
彼は剣の前に立ち止まる
それから、ソッと刀身に触れる
優しく・・・とても愛おしそうに、彼は剣を撫でていた
「なんて・・・あやつが聞いたら、『馬鹿野郎』と言うじゃろうな」
最初のコメントを投稿しよう!