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剣を撫でる手が・・・静かに止まる
いつの間にか、彼の真紅の瞳から一粒の涙が零れ落ちていた
それは地面へとおち、すぅっと溶けてゆく
彼はそれに気づき、ゴシゴシと目をこすった
「いかんな・・・ワシとしたことが
すっかり弱くなってしもうた」
力なく笑いながら・・・彼は剣から僅かに距離をとった
それから・・・深く頭を下げる
「これはワシのワガママじゃ
お主を持っていれば、ワシは恐らく・・・永遠にあやつの『願い』を叶えてやることはできんじゃろう
じゃから・・・ここからは、ワシ1人でゆく
ワシの罪を償い・・・そして、あやつの願いを叶えるために」
そう言って、彼は頭をあげた
心なしか、先ほどよりは表情が明るくなっていた気がした
ザッ・・・
剣に背を向け、歩きだす青年
真紅の両眼は、もう揺れてはいない
透き通った紅は、遥か先・・・これからのことを見据えているのかもしれない
「いつか・・・必ず、おぬしのその『想い』を必要とする者が現れる
そんな気がするんじゃよ
じゃから・・・ワシは託そう
ワシらの想いとお主の想いを・・・『次代』へと」
迷いはない・・・彼はしっかりとした足取りで歩き続ける
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