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挑発を受けても、彼は黙ってその男たちを冷めた目で見つめたままだった。
男たちは彼より背が高く、一回りも体が大きかった。
しかし、彼は誰よりも冷静で動じていなかった。
「無視かよ。まさか立ち向かおうとか考えてたりして?だったらどんだけバカだよ?」と、リーダー格の男は両手を広げておどけて言った。
それでも彼は表情一つ変えなかった。
こんな状況でいたたまれないのはむしろチンピラたちの方だった。
大きなため息をつき、女を指差して男は高らかに言った。
「言わねえとわからないのかよ。その女可愛がってやるから、よこせよ。ああ、その前にお前から可愛がってやろうか。」
そう言うと男たちは舌なめずりして武器を構えた。
そう言われてやっと彼は仕方なく口を開いた。
「悪いけど、他をあたってくれ。俺の邪魔をするな。」
男の周りの空気、特に、取り巻きたちの表情が変わった。男もそれを聞いて一瞬固まったが、また高らかに笑った。
「すげえな、そこまで言われたのは初めてだよ。楽しくなってきた。今のって聞き違いだよな?まさか邪魔するななんてそんなこと…」
「聞こえなかったのか、ならもう一度言ってやる。」と、彼は途中で口を挟んだ。
「俺は気が立ってんだ。お前らみたいなのを相手にしてる暇はない。どっか行け。」
そう言って男たちを睨みつけた。
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