156人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
「いって……」
考え込んでいたせいで反応ができなかった。
後ろを振り向くと、左の足首を掴んでいる手が見えた。
すぐそばには1人の人間が横たわっていた。
ボロボロの服を着た、30代くらいの男だった。
毛糸の帽子を深くかぶって目をつぶっていた。
サ「…な、なんだよ。」
寝てるのか?
いや、寝ぼけてたとしてもこんなにうまく私の足首を掴めるわけないし、第一意味がわからない。
男の手は力をゆるめることなくギュッと足首を握っていた。
手を伸ばして男の手を外そうとしたが、力が強くてビクともしない。
「…おい、ちょっと。」
男の体を揺すって声を掛けた。
起きる気配も手を離す気配もない。
「おい、離せよ。起きてんだろ?」
さっきより大きい声で、そして強く体を揺すった。
仕方が無い、強行突破するしか…と、コートの中に手を入れたとき、男の目がパチッと開いた。
最初のコメントを投稿しよう!