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サキは深くため息をついた。
ますます意味がわからない。
「…なんのつもりだよ。」
少し、いやかなりイライラしながらサキは聞いた。
だが、男はゆっくりとまばたきをするだけで動こうとしない。
「ねえ、聞いてる?」
今日何回目かわからないため息をついた。
そのとき足首を握っている手の力がふと緩んだ。
サキはその一瞬を見逃さなかった。
すぐ男の手を払い、急いで腰を上げようとした瞬間、いきなり左腕を掴まれ引っ張られた。
やっと上げた腰がまた地面につく。
男の方を振り返ると、男は起き上がっていて、目の前に顔があった。
よく見れば結構整っているが、目がぼんやりしていて何を考えているか全くわからない。
その顔からホームレスの匂いはしなかった。
男はじっとサキの目を見つめた。
少し距離を置くために腕を引っ張ったが、かなり力強く掴まれていた。
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