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「離してよ!何なの?」
彼女の問い掛けも虚しく、男から返事は返ってこない。
彼らは何も言わないまま数秒間見つめあった。
するとふいに男が口を開いた。
「…あんた、腰に何かぶらさげてんだろ。」
「は?やっと口開いたと思ったらそんなことかよ。手離してよ。」
「おいおい逃げるなよ、俺の質問に答えろって。」
「うざいな、早く離して。なんもぶらさげてないし。」
「ふーん。」
少しの沈黙の後、不気味にニヤッと笑って男が言った。
「へぇ、なんにも?」
「そうだって言ってんでしょ。」
サキのイライラは爆発する勢いだったが、男は意にも介さない様子だ。
「ふ~ん。でも、それは信用できないなあ。
なんせ初対面だろ?初っ端から信じられるほど俺器用じゃねぇし。」
サキは絶句した。
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