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「そっちが先に絡んできたんだろ!勝手に足掴んで転ばせたのそっちだろ!何が信じられないだ、私はあんたという人間が信じられない。」
「だって事実だろ?」
男は特に悪びれる様子もなくそう言った。
サキは殺したいという怒りを抑えながら、これ以上言っても無駄だと思い、今のこの状況を打開する一番の手立てを実行することにした。
「…何を根拠にそう言ってるんだよ。」
男はフッと笑って、地面にあぐらをかいた。
腕はずっと逃がすもんかと離さないままだった。
「まず一つ。こんな遅い時間に、真っ暗でしかもホームレスだらけの物騒な道を女の子が1人で歩いているのはおかしい。」
「…なぜ女だと…」
「二つ目。歩いているとき、なんとなく体の左を気にしてる。本人は無意識だろうけど。ポケットに手突っ込んでるし。」
サキの言葉を華麗に無視し、彼女の左腰を指差して、にこやかに言った。
そして、指差した手をそのまま顔の前に持ってきた。
「もう一つ。これが一番確かな根拠。」
そう言うと、左手でサキの腰を触った。
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