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あるホテルの一室。
彼はソファに座ってボーッと一点を見つめていた。
ベッドには女が1人、目をつぶって横たわっている。
チンピラ男を吹き飛ばしてからまだ数分とたたない。
ふと窓に目をやると、向かい側のホテルが見え、見たくもないものが目に入り込んできた。
彼はカーテンを荒々しく閉め、部屋の入口に向かって歩き出す。
「今の若い奴はカーテンも閉めねぇのかよ。」
そう言いながらドアのチェーンをかける。
深いため息をつきながら寝ている女に近づく。
この部屋に一つしかないタブルベッドの端に腰掛けた。
「ん…」
女の方をゆっくり振りかえると、うっすら目を開けて天井を見つめていた。
「お姉さん、起きた?」
彼の問い掛けに不思議そうな目を向ける。
次いで辺りを見回しゆっくりと上体を起こした。
「…ここ……どこ?」
女の声には少し恐怖が入り交じっていた。
ゆっくりと視線を彼に向ける。
「あなたは…誰?」
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