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扉を開けると、そこは一面コンクリートむき出しのグレーな世界。
サキはそのまま狭い壁と壁の間を歩き出した。
その先にはまたしても扉。
ドアノブを掴み扉を勢い良く開けた。
ふと、先ほどの記憶が蘇る。
さっきの男のこと、報告しなくてもいいよな、むかつくし。
でもなんか嫌な予感がするんだよな。
こういう嫌な予感は当たるものである。
扉の先にはドラマで見るような暗く汚い部屋、ではなく小綺麗で静かな空間があった。
ここがサキの居場所である。
靴音の響く金網の足場は左右2つに分かれていて、壁にはいくつか扉がついている。
正面にはコンクリートの道があり、ガラス張りの小部屋がいくつか並んでいる。
机や椅子、パソコン、薄型テレビなどが配置されており、いろんな用途で使えるようになっている。
サキは左に延びている道を進み、T字路を右に曲がった。
するとある扉から黒いスーツを着た男が出てきた。
彼はサキを見るとにこやかにお辞儀をした。
「おかえりなさいませ。」
「おつかれ。」
サキはひらひらと手を振りながらその男とすれ違った。
本当に殺し屋の組織なのかと疑うほど、綺麗な中身である。
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