5.

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「リストラされてたってだけ。3日前に。」 そう言ってサキはポケットから紙を出す。 ボスは黙ったままその紙を遠目に見る。 「殺さなくてもよかったかな…なんて。 それに…あいつには家族が普通にいる。奥さんとたった1人の娘。」 サキは財布に挟まれていた写真を思い出した。 「で、残された家族がかわいそうだと。」 「そういうわけでは…」 「じゃあ何だよ。お前、何が言いたいの?」 サキは紙を折り畳んでポケットにしまいながら呟いた。 「別に。嫌な仕事だなって思っただけ。」 「そりゃあ普通の人間にはできねぇ仕事だよな。」 「やりたくてやってるわけじゃない。」 「やるって決めたのはお前だろ。」 そう言いながらボスは椅子から立ち上がった。 「ちょっと出てくるからここで報告書書いてろ。」 上着を羽織りながら扉に近付く。 何も言葉を発しないサキにチラッと目をやり、近付いて下を向いている彼女の前髪をガッと掴んだ。 そして壁から少し離れた体と頭を思いっきり壁にたたき付けた。
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