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「リストラされてたってだけ。3日前に。」
そう言ってサキはポケットから紙を出す。
ボスは黙ったままその紙を遠目に見る。
「殺さなくてもよかったかな…なんて。
それに…あいつには家族が普通にいる。奥さんとたった1人の娘。」
サキは財布に挟まれていた写真を思い出した。
「で、残された家族がかわいそうだと。」
「そういうわけでは…」
「じゃあ何だよ。お前、何が言いたいの?」
サキは紙を折り畳んでポケットにしまいながら呟いた。
「別に。嫌な仕事だなって思っただけ。」
「そりゃあ普通の人間にはできねぇ仕事だよな。」
「やりたくてやってるわけじゃない。」
「やるって決めたのはお前だろ。」
そう言いながらボスは椅子から立ち上がった。
「ちょっと出てくるからここで報告書書いてろ。」
上着を羽織りながら扉に近付く。
何も言葉を発しないサキにチラッと目をやり、近付いて下を向いている彼女の前髪をガッと掴んだ。
そして壁から少し離れた体と頭を思いっきり壁にたたき付けた。
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