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彼女は古いネオン街を歩いていた。 一昔前に流行った独特の明かり、ネオンや派手な装飾をまとった店が軒並みを連ねている。 とはいえところどころ割れていたり、電気がついていなかったりしている。 しかしそれらはあくまでも飾りで、電子音が混じった音楽や彩り豊かなLEDの巻きついた看板が通りを活気付けていた。 とても深夜0時を過ぎているとは思えない。 きらびやかに彩られているのは店だけでなく、人々もまた、自らを誰よりも最高に仕立て上げ、欲望のままに着飾っていた。 彼らの口から出た言葉は、客たちに現実逃避を促すもの。 苦しくて、辛くて、今にも押し潰されてしまいそうな現実から、いとも簡単に逃がしてくれるのだ。 その対価は決して安くはない。勘定を見て波が引くように現実に引き戻される感覚は凄まじい。 世の中全ては金なのだ。欲望に負けて追いつかない金によって引き起こされる喧嘩や暴動は日常茶飯事だった。 その度に、ここぞとばかりに名ばかりの権力を振りかざす警察官がやって来て、訳も聞かずに手錠をかけて連れて行く。 それを見て、自分は絶対にああなりたくないと皆が思っているのは顔を見ればわかる。 ムショ行きも、野次馬も、金にはならない無駄な時間だ。 しかし明日は我が身と言うように、毎日同じことが繰り返されていることを今日を生きる人々は知らない。 明日、自分がどうなるか考えたことはないか。 一歩間違えて谷底へ転落した人間たちは、たちまち決まって後悔するのだろう。 笑えるな、後で悔やむんだ、悔やむくらいなら最初からちゃんと考えればいいのに。 とにかく、この通りは目がチカチカする。 全身が音や光でフワフワしてくる。
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