156人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
数時間後、ヘルはあるマンションの前にいた。
地上40階建ての高層マンション。
中に入ってインターフォン代わりの機械の数字ボタンを4、0と押した。
すぐにエレベーターホールへと続く道のガラス張りの自動扉が開く。
金や銀の華やかな装飾で彩られた4基のエレベーターが2基ずつ向かい合っている。
上のボタンを押すとすぐに音が鳴り、扉が開いた。
そのエレベーターに乗り込み、40を押す。
彼は静かな運転音の中、壁に寄りかかり目をつぶったが、あっという間に40階を昇り切り、軽やかな電子音の後に扉が開いた。
そして目の前には一つの大きな扉。
表札には“榊(サカキ)”と書いてあった。
彼はカメラ付きインターフォンを押して、家主の返答を待った。
しばらくして、扉の鍵を外す音が聞こえてくる。
ヘルは迷わずドアノブに手をかけて、扉を開けた。
「おかえりなさい。」
玄関先に立っていたのは品の良さそうなかわいらしい女性だった。
茶色の少し長めの髪に、華奢な体、そして綺麗な肌。
彼女はここ“ビーナスマンション”のオーナーである榊律子(サカキリツコ)の娘、海里(ミサト)である。
最初のコメントを投稿しよう!