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「ただいま。」
鍵を閉めながら、ヘルは海里の目をまっすぐ見て言った。
彼女はやんわりと微笑む。
「おなかすいた?」
ヘルは靴を脱いで用意されてたスリッパに履き替え、彼女の隣りに立った。
「それってどっちの意味で?」
あまり身長差のない彼女の髪を手で触れながら彼は聞く。
「普通の意味で。」
彼女はヘルの顔を覗き込むように見て答えた。
「普通…ね。作ったんだ?」
「うん。」
「じゃあ食べようかな。」
ヘルはニコッと笑って彼女の髪から手を離した。
「じゃあ用意するね。」
そう言って彼女はパタパタとキッチンに戻っていった。
ヘルは洗面所に入って、水道をひねった。
同時に鏡に写った自分が目に入る。
少し開いた口から見えた歯を、彼は舌でなぞった。
…まさに女パラダイス…
マッドの言葉をふと思い出す。
いいんだよ…
俺は
俺には
海里がいるから
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