156人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
でも、彼女は言ったんだ。
じっと綺麗な瞳で俺を見て、
あなたの目って綺麗ね。
って。
俺は動揺した。
すごく強い瞳で見つめられたから。
そんなこと言わなきゃよかったのに。
そのままやめてよって振り払えばよかったのに。
なんで見知らぬ男に振り向いて
わざわざ誘うような言葉を俺に言ったんだろう。
いてもたってもいられなくなって、彼女の腕を引っ張ってすぐ近くのホテルに入った。
「へぇ。ラブホってこんななんだ。」
彼女は周りを見渡して言った。
「入ったことないのか?」
「うん。こういうのとは無縁の生活を押し付けられてるからね。」
彼女は振り返って、中途半端なとこに突っ立っている俺に近付いてきた。
「あなたはこういうとこ慣れてるんでしょ?」
そう言って俺にどんどん顔を近付けてきた。
「駄目だ。」
そう言って彼女の肩を押す。
危ない…もう少しで取り返しがつかなくなるところだった。
何をやってるんだ俺は。
不思議そうな顔をしている彼女に、俺は言った。
「あんまり顔は近づけないでくれ。」
最初のコメントを投稿しよう!