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「どうして?」
俺はこの質問に答えられなかった。
「何か言えないわけがあるのね。」
海里はそう言って俺から離れた。
そして背を向けて窓のそばに立った。
「ごめん。」
唐突に部屋に響いた声に彼女は振り返る。
「なんで…謝るの?」
「俺は…
俺は吸血鬼なんだ。あんたの血を吸おうとした。
でも…もういい。」
2人の間に長い沈黙が流れた。
先に口を開いたのは海里だった。
「ふぅん、そうなんだ。吸血鬼…現実にいるんだ。」
特に怖がる様子のない彼女に向かって俺は淡々と言った。
「吸血鬼とキスをすると契約が交わされる。」
「契約?」
海里は振り返って言った。
「キスをされた女は、した奴しか受け付けない体になる。」
俺はベッドに腰掛けて、海里を見ずに言った。
「他の奴に吸われたら死ぬ。
そして、もしその吸血鬼が他の女と新に契約を交わしたら…前の女との契約は破れ、そいつの寿命が半分になる。」
俺は自嘲気味に笑った。
「圧倒的に女は不利な話だよな。だから、顔は近付けるな。」
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