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選べるなら通りたくない道だがそうもいかない。
店と店の間、電柱の影で暗くなっているところを見つけて身を潜め、ある男が出てくるのを待っている。
時計を見るとまだ10分しか経っていなかったことに驚いた。こんなところにいたら夜が明ける頃にはくたくただ。
すると、目当ての男がトボトボと店から歩いて出てきた。
自分の前を通り過ぎるのを待ってから後を追いかけた。
永遠に続くのではないかと思うこの騒音もだんだんと薄くなっていき、通りの終わりに近づくと静かになった。
スーツにビジネスバッグ、ガニ股の男は酒を飲んだようだったが、顔には疲労と失望の入り混じった表情を浮かべていた。
浮かれ文句に誘われたらしいが、あまりいい気分を味わえなかったようだ。
静寂ゆえにわずかな音も響いてしまう。彼女はなるべく音を立てずに歩いた。
しかし、男は考え事をしているのか、全く周りを気にしていないみたいだった。
私は一息吸うと、その距離を縮めるべく歩みを早めた。
前、後ろ、上、あらゆる方向に耳を傾け、事が順調に進んでいることを確認した。
そしてさらに距離を縮め、それがほとんどゼロになったとき、男の左肩と右腰を掴んで、幅1mほどの建物の隙間に力尽くで引きずり込んだ。
不意をつかれたその体は簡単に地面に倒れこんだ。
何事かと急いで顔を上げて見えたのは、暗闇に佇む何か、輪郭は見て取れるが死神のようにも見える闇に負けない黒い何かが立っていた。
男は立ち上がるより先に文句を言いかけたが、その死神が向けてきたものを見るなり目を見開いた。
そして、体が小さく二回痙攣した後、その目を最大限に見開いて後ろに倒れた。
ワイシャツにみるみる赤いシミが広がり、男は動かなくなった。
彼女が銃を撃ったのだ、サイレンサーをつけた銃を二発撃った。
今日、最も不快な音がした。
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