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銃を持った腕を下ろし、反対の手で頭に被っていたフードをとった。 周りに同化した黒く短い髪に、美人とは言えないが、清閑な顔立ちをした10代後半くらいの女だった。 彼女の名前はサキだ。 平仮名でもよかったが、片仮名の方がこの仕事に合うと思った。 本当の名前は、この世界に入ったときに捨てた。というか、いろいろあって覚えていない。 依頼を受け、任務を果たし、金を受け取る。 それが、殺し屋だ。 サキは倒れてもう二度と動かない男をじっと見つめ、息を軽く吐いた。 銃を腰のフォルダーにしまい、しゃがみこんで男の鞄を探って財布を取り出した。 ありきたりで、警察が捜査に時間をかけない強盗と見せかけるのが基本の手だった。 黒くくたびれた長財布には千円札が三枚あるだけだった。 コートの内ポケットを探ると、中から社員証と一枚の紙が出てきた。 社員証には仲田浩二という名前と、とある大手企業の名前、営業部長という肩書き、好印象を受けようと笑みを浮かべている写真、入社年月日が書かれていた。 もう一つの少し乱暴に折り畳まれていた紙を開いて中身を確認した後、サキは無言でその二つを元に戻した。 他に金目のものはないかと探したが、時計に名刺入れやペン、ネクタイに至るまでほとんど安物だった。 サキは盗るのをやめて、不自然にならない程度にその場を荒らすと、立ち上がってそばに落ちていた酒の瓶を手に取った。 ほんの少し中身の残ったそれで、男の頭を思い切り殴った。 銃声よりは少し大きな音で瓶は砕け散った。 これで、酒瓶で襲い、終いには銃を使った強盗殺人としてすぐ片付けてもらえる。 男に一瞥をくれると、瓶を放り投げ、再びフードを被り直してサキはその場を静かに立ち去った。
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