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「殺しちゃうかもしれないよ?」 ベッドに腰掛けながら彼女の腕を引っ張って耳元で囁く。 海里は少し肩を揺らした。 もう自分が豹変し始めてるのが嫌でもわかる。 それなのに、彼女は強い意志を持った目を向けて軽く微笑む。 「本望よ。…ちょっと待ってて、紅茶持ってくる。」 そう言って去ろうとした彼女の腕をもう一度強く引っ張った。 「本気で言ってるのか?」 怪訝そうな目で彼は言った。 「本気よ。」 「なんでそんなこと言うんだよ。本望だなんて…」 彼は少し強い口調で言い、腕をグッと引っ張った。 海里の顔が鼻先数センチのところで止まる。 「…貴方と契約したときに、私は命も懸けたの。」 少し寂しそうな口調で囁くように彼女は言った。 「情緒不安定で、暗い海の底に沈んでいる貴方を救うには…私自身を捧げるしかないのよ。」 彼女の言葉にヘルはたじろいだ。 「あの時貴方と出会ったのは運命なの。私が貴方の救世主になるのよ。」 そう言いながら、海里は自分の腕を掴んでいるヘルの手をぎゅっと握った。
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