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「表情が戻ったね。」
そう言いながら彼の頬に軽く触れる。
「お前のせいでいろいろ収まったよ。」
「せいでって何よ。」
「せっかく襲えると思ったのに。」
そう言って彼女の目を見つめる。
「そんなに見つめられたら目に穴開いちゃうよ。」
照れ隠しにそう言い、彼女も負けじと見つめ返す。
「…それはちょっと怖いかな。」
ふふっと海里は笑った。
その顔を見るとまた体がざわざわと疼いてくる。
彼女の髪、頬、唇、そして、首に触れる度に血が欲しくなる。
俺は、やっぱり吸血鬼だ……
彼女と一緒に暮らしているのも血を吸うため。
体はその延長線上。
こうやって彼女の笑顔を見たときも、欲しいと思うのは血。
それが俺にとっての欲望。
契約を結んだ相手なんてそんなものだ。
海里は優しいし、良い人だとは思う。
だけど好きにはなれない。
いや、好きになってはいけない。
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