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「なぁ海里。」
ヘルは彼女の目を切なそうに見つめる。
「俺のこと……
どう思ってる?」
「何よいきなり。」
そう言って彼女は紅茶を飲んだ。
「私は貴方を救いたいだけよ。」
少しの間の後、唐突にそう切り出した。
「ヘル、私は貴方のこと好きよ。でもきっと貴方は私のことそう思ってない。」
ヘルは少し目を見開いた。
「ただ契約を交わしただけの相手だから…心の底から愛し合うことはできない。」
少しうつむき加減にそう呟いた。
「でも契約を交わしたからこそ、育まれるものもあるんじゃないの?」
「違う。」
ヘルの声は少し震えていた。
「違うんだ。本当は血を吸えるならどんな女でもいいんだ。でも…海里は…そんな風に扱いたくないんだ。」
彼は海里の方に体を向けた。
「お前は…俺みたいな奴と愛し合っちゃいけない。」
「どうして?」
ヘルは彼女の頭に手を伸ばしてそっと撫でた。
そして、瞳に哀しみを映しながら、そっと、しかし言い聞かせるように呟いた。
「俺が…化物だから。
契約してから言うのも遅いけど、お前は普通の人間を愛するんだ。
それがお前にとっての幸せだ。俺なんかのために人生を無駄にしちゃいけない。」
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